寝袋選びに迷われている方、どれも一緒だと思っている方。行く予定のキャンプ場に適したシュラフを選ばないと、最悪な場合寒くて眠れなくなります。冬キャンプでは命に関わることもあります。
選ぶポイントをおさえて、快適な眠りを確保しましょう。
寝袋(シュラフ)の選び方
選ぶポイントは3つです。
- 快適温度
- 形状
- 中綿素材
この3点を気にして選べば、テント内での快適なお休み時間が約束されます。
それぞれについて詳しく説明します。
快適温度
まずシュラフの外箱に記載されている3つの温度を見てください。
「快適温度(comfort)」「限界温度(limit)」「極限温度(extreme)」と記載があると思います。
こちらはヨーロピアン・ノーム(ヨーロピアン・スタンダード)という、シュラフの温度表記に関するEU諸国の統一規格です。シュラフメーカーの独自の基準で算出していた温度表記を、第三者機関が検査した温度表記に統一しようとする安心安全な規格です。
国産ではNANGAやモンベルなどのメーカーが採用しています。
快適温度 COMFORT | 一般的な成人女性が寒さを感じることなく 寝ることができる温度の下限 |
限界温度 LIMIT | 一般的な成人男性が寝袋の中で丸くなって 8時間寝ることができる温度の下限 |
極限温度 EXTREME | 一般的な女性が膝を抱えて丸くなった状態で 6時間耐えられる温度の下限 |
そういうわけで、「快適温度」を目安に選んでください。寒がりな女性はキャンプ場の『快適温度=最低気温−5℃』くらいで検討すると良いでしょう。「極限温度」については“寝ることができる”ではなく“耐えられる”というところに注目してください。当然試したことはありませんが寝ることはできないようです。
極限温度付近での使用は大変危険です
低体温症のリスクがありますので絶対にやめましょう
ヨーロピアン・ノームを採用していないメーカーも多くあります。メーカー基準の多くは「極限温度」を除いた2つの温度表記があります。
キャンプ場のホームページには季節ごとの最低気温が書かれていることがあります。天気予報でチェックすると実際のキャンプ場と温度差があることも。要注意です。
形状
マミー型と封筒型(レクタングル型)があります。頭側がマミー型、足元が封筒型といういいとこどりシュラフもあります。
マミー型
マミー型は顔も含めた全身をピッタリと覆うような形状のものが多いです。最近は足元がゆったりしたタイプのものも販売されています。首や肩を覆ってくれるので寒さを感じにくく、冬用・登山用として人気です。
冬キャンプもしたい方はダウン素材で、頭や首・肩が覆われるタイプ(マミー型)がおすすめです。
頭側がマミー型、そこから下は封筒型という、お互いの良い点を集めたシュラフがあります。マミー型は寝苦しい、マミー型には慣れていない方におすすめです。
封筒型
封筒型は中が広々としているので動きやすく快適です。春・夏・秋用のものが多いです。
封筒型は快適温度が氷点下でも、肩より上が冷えてしまうので寝心地は良くないです。体験談ですが、快適温度-5℃の封筒型で-3℃の中、寒すぎて寝ることができませんでした。肩をダウンコートで覆うことでシュラフ内も温まり、快適に寝ることができました。冬は隙間を作らないことが重要です。
中綿素材
主にダウンと化学繊維(化繊)があります。
ダウン
特徴1:軽く暖かいものが多いです
荷物を軽くしたい方はコンパクトに収納できるのでおすすめです。冬キャンプを考えている方もダウン素材がおすすめです。
ダウンが暖かい理由はダウンが含む「空気」にあります。ダウンとは水鳥の羽毛のことで、羽と羽の間に空気をたっぷり含み膨らむことで暖かさを保ちます。この空気層が強力な断熱材となり、外からの冷気を防ぎ、体熱が外へ逃げるのを抑えます。ダウンの膨らみについては主にフィルパワーという数値で表します。
フィルパワー(FP)
フィルパワー(FP)という数値はダウンのかさの高さを表します。例えば、800FPは1オンス(28.4g)のダウンを2.54㎤の筒に入れた時、800立方インチの体積に膨らんでいることをいいます。
数値が大きいほどダウンがより膨らみ空気を含んで暖かいですが、シュラフ自体の性能も重要で、ダウンの総量や厚みによって同じFPでも暖かさは変わります。
有名国産メーカーの冬用ダウンシュラフは、700〜800FPでダウン量600g前後(総重量1kg前後)です。参考にしてください。ちなみにナンガのオーロラライト900DXは760FPでダウン量900g。とても寒がりな方の冬キャンプ用におすすめです。
また、ダウンの羽が十分に開かず、羽と羽の間に含む空気の量が減ると暖かさが半減します。ダウンが汗や油などの汚れを吸収して羽が潰れてしまい、羽が含む空気の量が減ってしまうと暖かさが半減します。定期的なケアでダウンをふわふわに保つことが大切です。
以上の理由から、ダウンは非常に高い保温性を持つ素材とされています。ただし、ダウンは水に弱いという特性もあり、濡れると保温性が低下します。
ほとんどのダウンシュラフがフェザー(羽根)を含んでおり、ダウン(羽毛)とフェザーの比率は8:2や9:1のことが多いです。ダウンのみでは形を保つことが難しいからです。
特徴2:洗濯機での洗濯ができません
ダウンを洗濯機で洗わないほうが良い理由は4つあります。
- 生地の損傷:洗濯機の強い力が生地を傷つける可能性があります。
- ダウンの偏り:洗濯機で洗うと、ダウンが一箇所に偏ってしまうことがあります。
- ボリュームの減少:洗剤がダウンの必要な油分を洗い落とし、ボリュームが失われる可能性があります。
- 撥水加工の損失:洗濯により、ダウン製品に施された撥水加工が失われる可能性があります。
これらの理由から、ダウン製品は手洗いが推奨されることが多いです。ただし、製品によっては洗濯機で洗えるものもありますので、必ず洗濯表示を確認してください。
また、洗濯後の乾燥も重要で、ダウンが固まらないようにほぐしながら乾燥させる必要があります。不安な場合は、専門のクリーニング店にお任せしましょう。
また、ダウンシュラフを家で保管する際は収納袋に入れずにゆったりした袋で保管しましょう。ダウンを潰さずに長持ちさせる秘訣です。
化学繊維(化繊)
特徴1:価格が安い
化繊シュラフの強みはなんといってもお値段です。
同じ性能のダウンシュラフと比べても半額程度の差が出ます。家族分を揃えようと思うと差額は膨らみます。
例えばダウンも化繊も取り扱っている国産ブランド「イスカ」で比較してみましょう。
アルファライト 700X | エアプラス450 | |
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中綿素材 | 化学繊維 | ダウン(800FP) |
総重量 | 1300g | 840g |
最適季節 (最低使用温度) | 春・夏・秋 (−6℃) | 春・夏・秋 (−6℃) |
価格帯 | 約20,000円 | 約50,000円 |
3シーズン向けのシュラフです。化学繊維の方が少し重いですが、500mlペットボトル1本分です。数が増えれば重くなりますがソロでしたら許容範囲でしょう。
ですが値段は大きく変わります。化学繊維シュラフはダウンよりも半額以下です。当然数が増えれば差額は大きくなります。4つ購入で12万円近く安くなるので、差額で2ルームテントが買えます。
化学繊維も企業努力で高性能低価格が実現しております。感謝しかないです。
雪深い厳寒登山の場合、対応している化学繊維シュラフはほとんどありません。ここはダウンシュラフの出番です。また、あくまで軽量にこだわる方(徒歩キャンパーさんなど)はダウンシュラフ1択です。
冬山登山もするし1年中キャンプもする方は、3シーズン用を化学繊維で価格を抑え、冬用を高品質ダウンにするのも良い選択と思います。
特徴2:洗濯機で洗濯ができる
化学繊維はご自宅の洗濯機で洗えます。この点もコスパの良さが伺えます。
洗濯表示をよく確認して洗濯してください。
特徴3:独自の発熱素材
最近は発熱素材の化学繊維があります。
吸湿発熱素材の化学繊維は汗を吸って熱に変える画期的な素材です。
おすすめシュラフ
春・夏・秋用とオールシーズン、冬用の3タイプに分けておすすめのシュラフをご紹介します
春・夏・秋用
快適温度が高めなものが多いです。寝心地が良く、肌掛けや敷布団としても使用できる封筒型がおすすめです。
3月から10月くらいが使用の目安です。
コールマン マルチレイヤースリーピングバッグ
快適温度:−5℃
形状:封筒型
中綿素材:化学繊維
重量:4.9kg
3つのシュラフを組み合わせることで、最低快適温度-5℃まで対応できます。封筒型なので、冬の寒い時期というよりは春の初めから秋の終わりに使えるシュラフです。
最薄レイヤーは快適温度12℃なので、夏の肌掛けのような感覚で使えます。
広げて敷布団のような使い方もできますよ。
スノーピーク セパレートシュラフ オフトンワイド
快適温度:−2℃
形状:封筒型
中綿素材:ダウン(ウォッシャブルダウン)
重量:3.1kg
敷布団と掛け布団が一体化したようなお布団シュラフです。それぞれを分離させて、掛け布団と敷布団別々で使用できます。とにかく寝心地は最高です。
足元を開けたトンネル型で春過ぎから初夏にかけても涼しく快適に寝ることができます。
ダウンの防水加工を施したウォッシャブルダウンを使用しているため洗濯機で洗うことができます。
快適温度は−2℃ですが、封筒型のため肩口は開いており、寒い時期はあまりおすすめしません。5月から10月くらいが使用の目安です。
オールシーズン
3シーズン用に比べて快適温度が低めに設定されています。万能型ではありますが、雪山登山や氷点下以下のキャンプでは寒さをしのげないこともあります。
春先から初冬あたりまでの8ヶ月間が使用の目安です。
Snugpak ベースキャンプ スリープシステム
快適温度:−12℃
形状:中間型
中綿素材:化学繊維
重量:3.2kg
頭側が閉じるタイプの中間型(頭側マミー、足元封筒)です。
ドローコードを引っ張るとフードが閉じるため、首元や肩口から冷気が入りにくくなります。
マルチレイヤーで、全て重ねると快適温度-12℃まで対応できます。
空洞状の化学繊維を使用しているので、空洞内の空気層が熱を逃さず暖かいです。
足元がゆったりしているので、マミー型のような窮屈感はありません。
秋の終わりから冬の初めにかけて幅広く使用できます。
コールマン タスマンキャンピングマミー
快適温度:−8℃
形状:マミー型
中綿素材:化学繊維
重量:2.8kg
マミー型ですが頭側や足元が広めに作られているので窮屈さを感じにくいです。
快適温度は-8℃なので、最低気温0℃以上の地域では快適に過ごせると思います。
重量は2.8kgなので、徒歩移動では重さを感じるでしょう。
比較的安価で手に入りやすいシュラフです。
冬用
冬用シュラフは必要か、という話がよくあります。結論を言うと、冬キャンプをするなら必要です。
しっかり選ばないと、場合によっては命に関わることもあります。
11月から2月くらいが使用の目安です。一番使用期間が短いですが、防寒性能の高さから高価なものが多いです。
NANGA オーロラライト900DX
快適温度:−10℃
形状:マミー型
中綿素材:760FPダウン
重量:1.4kg
ダウン素材のマミー型です。快適温度は-8℃。
ショルダーウォーマー、ドラフトチューブを備える保温性抜群のシュラフです。
ショルダーウォーマー
:肩部分にダウンの入ったチューブ。冷気の侵入を防ぎ保温された空気を逃しません。
ドラフトチューブ
:ジッパーに沿ってダウンの入ったチューブを設け、ジッパーの隙間から入り込む冷気を防ぎます。
外側には結露からシュラフを守るシュラフカバーが必要ない耐水素材を使用しています。
永久保証で、長く大事に使用することができます。
ナンガは滋賀県米原市に本社を構える日本の会社です。
イスカ エアプラス630
快適温度:−15℃
形状:マミー型
中綿素材:800FPダウン
重量:1.03kg
冬用シュラフとして最もおすすめしたいのが、大阪に本拠を構える国産ブランド「イスカ」のエアプラス630です。
イスカのマミー型シュラフの機能は様々あります。
- 頭側の放熱ロスを抑えるフードチューブ
- 肩口からの冷気侵入を防ぐショルダーウォーマー
- ジッパーからの冷気を防ぐドラフトチューブ
- 体の形状に合わせて厚みを変化させた3Dシルエット
- 足元に多めの保温剤を入れたフットボックス
- ダウンのかさ高をキープする台形ボックス構造
- ダウンの偏りを防ぐセパレートボックス
冷気の遮断と形状のキープ力を高めており、高価格ではありますが余りある高性能に、真冬のキャンプも安心です。
以上、季節で選ぶおすすめシュラフでした。
この記事が、「睡眠」を快適に過ごすために大事なシュラフを選ぶきっかけになれたら嬉しいです。
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